句集『桐一葉』
渥美人和子
岳書館
2022年7月20日発行
煤逃げの男ばかりの映画館
玉葱の皮の軽さよアッパッパ
日本橋ふり出しにして納涼船
大川に往き交ふ船や三社祭(さんじやさま)
玉章や子規の使ひし手水鉢
とある夜の霧に消えゆくジャンギャバン
羽抜鳥声にならざる声絞る
来し方といふには険し忍冬
九十歳の春を諾ひ九十九まで
しばらくは己が温みのコート吊る
(抄出 小林貴子)