句集『澪杭(みおぐい)のごとく』 幹 自聲(かん・じせい)
発行:令和5年2月14日
発行所:株式会社 文學の森
自選15句
底なしにあをき空あり風花す
朱鷺の首雪降るたびに黒くなり
束風や上路の山の潮まみれ
堅雪を朱に芽鱗のおびただし
水鳥の鋭きこゑを地震の刻
熱燗や廃炉作業に出稼ぎと
除染済確認せんと巣箱掛く
朧夜や狂はぬやうに水を呑む
親不知海より揚がる蟬のこゑ
慰めん夏野へ墜ちし魂ふたつ
蔓荊の香に清貧の月日かな
黄落や死ぬるまで今日積み重ね
鉛筆に詩嚢宿るや霜の夜
灯りて澪杭のごと枯野宿
気嵐の黄金色や立山より暾