句集『鑑真』宮坂静生
出版社 本阿弥書店
発行日 2024年8月5日
自選 十五句
鑑真も空海もゐる月の中
帰らざる日よ寝室に登山杖
蜃楼(かいやぐら)わが青春の大江ゐる
八十年は道草といふ薄暑
霓(にじ)といふ兜太が贈りくるるもの
クリムトもシーレも世紀末の汗疹(あせも)
鉄材を擲(なげう)つパール・ハーバー忌
地下壕の滴り闇を穿ち抜き
広島へ行く一輛はみんな螽蟖(ぎす)
黄落や自死の三島が通せんぼ
栗は踊子タイツのごとき網袋
コロナウイルス蓑虫の春装で
傘寿とて緑陰力の身につきし
兜太嵐龍太花冷え杏子の死
戦争が立たぬ縁側ぬくとしよ