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『鑑真』宮坂静生

2024-09-01

句集『鑑真』宮坂静生

出版社 本阿弥書店

発行日 2024年8月5日

 

自選 十五句

鑑真も空海もゐる月の中

帰らざる日よ寝室に登山杖

蜃楼(かいやぐら)わが青春の大江ゐる

八十年は道草といふ薄暑

霓(にじ)といふ兜太が贈りくるるもの

クリムトもシーレも世紀末の汗疹(あせも)

鉄材を擲(なげう)つパール・ハーバー忌

地下壕の滴り闇を穿ち抜き

広島へ行く一輛はみんな螽蟖(ぎす)

黄落や自死の三島が通せんぼ

栗は踊子タイツのごとき網袋

コロナウイルス蓑虫の春装で

傘寿とて緑陰力の身につきし

兜太嵐龍太花冷え杏子の死

戦争が立たぬ縁側ぬくとしよ

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